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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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終焉



地上に降りてきてしばらく経ったある日のことだった。
ヴァールハイトは雪が降る中、川辺で誰かを待っていた。
誰かはわからない。 ヴァールハイトもここに誰かが来るという明確な自信すらない。 だが、どうしてもここで待っておかなければならないと、そう心が思った。
切ったばかりの短くなった髪を、冷たい風がくすぐる。 その風と一緒に、皮肉屋の声が聞こえた。
「新婚生活はいかがお過ごしですかね弱虫王子サマ」
「ああ、やっぱり君だったのか。 エスクロ」
紫色の髪、誰かを試すような表情のままエスクロがヴァールハイトの横に立つ。
「聞いたよ。 最終夜に出場するんだって?」
「まぁオレはお前みたいな弱虫と違って強いからな」
嫌味を言うエスクロに、ヴァールハイトはクスクス笑った。 その笑みの意味がわからず、エスクロの表情が変わる。
「そうだ。 私は本当に弱虫だ・・・・・・。 何を変えることもせず、ただ変えられることを望んでいた、人間と共に歩くことも許されない愚かな翼人だ」
自分を嘲笑うヴァールハイト。 だがその笑顔は、清々しいほどだった。
エスクロは気まずいまま、やっと話を切り出す。
「シュガーから聞いた。 お前が祭りに参加しなかった時のこと。 ・・・・・・悪かったな。 何も知らずにいて、駆けつけることもできなかった」
「ははは、何を言う。 あれは私の問題だ。 君が心配することなんて何もない。 あのお陰で何か吹っ切れたんだ。 だからこうして今を生きているんだ」
無くなった頬の刻印を親指でなぞり、ヴァールハイトがまた笑う。
「本当に愚かなことよ。 もっと早くに気づいていれば、シュガーに迷惑かけずに済んだはずだなぁ・・・・・・」
彼の短い髪が光に照らされて、銀色に輝く。 美しい紫の瞳は、宝石のように煌きながらずっと遠くの未来を見ていた。
それを眺めて、エスクロは羨ましく思い、そして微笑ましくも思った。
「オレが祭りに参加した理由、あんたは知ってるっけ」
「どうせまた詐欺のことなんだろう?」
「そうだった。 前までは」
エスクロが足の先で枯葉を割る。
「願いは幾つもある。 でも詐欺なんてオレにとっては人生と同じ、息をすることと同じだしメシを食うのとも同じだ。 そんなの願いにしても意味ねぇだろ」
今までの表情とは違うような穏やかな笑顔。 エスクロが初めて他人に見せた顔だった。
それは詐欺師のエスクロでも、猫かぶりのエスクロでもどちらでもない、本当の彼女だったのだろう。
「お前たち夫婦が幸せなら、楽しいのなら。 オレもそれを1番近くの特等席で見届けたい。 それがオレの願い」
変な願いだろ?
とエスクロが控えめに笑う。
「でも何日も考えて、一番嫌なことを考えたんだよ。 お前が死ぬのも嫌だった。 もちろんシュガーが悲しむのも死ぬのも嫌だ。 でも1番嫌なのは、楽しむお前たちを見れなくなった時の自分だ。 もう1人は嫌だもんな・・・・・・。 シュガーだって1人の足で立って歩けるようになったんだから、オレだってそれを見習いたい。 オレが考えて出た結果さ」
足元の石を拾って川に投げるエスクロ。 その水飛沫を見ながらまたつぶやく。
「その願いが誰かと一緒にいるっていうこと自体、1人で歩けるようにはなってないんだがなぁ。 その辺は多めに見といてくれよ旦那」
「そうだな。 そうしよう」
ヴァールハイトが左手を差し出す。 それを不思議に見ていたエスクロの前で、彼は魔法を発動させた。 構築されて行くパーツ、姿を現したのは黄金色の剣。 美しいその剣を、ヴァールハイトはエスクロに手渡す。
「それはオリハルコンと呼ばれる剣。 とても丈夫で壊れることはない。 言わば騎士の剣さ」
「これは旦那が使う剣だろ」
「もう私には必要のないものだよ。 それに必要になればまた創ればいい」
「じゃあありがたくいただくよ」
そしてエスクロは、ヴァールハイトに言う。
「シュガーのこと、よろしくな」
「あぁ。 この命に代えても、私は私の姫を護ろう」


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