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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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幸福と災難
幸福と災難

出演人 ロワナ・ヴァルシス
アレス・フォルックス・リラ
ワーブラ・ゲルブ (美月さん)
ラ・パーヌ (ゆず胡椒さん)


ゲーム1回戦は「宝探し」
先程、ロワナはパートナーのワーブラと共にマフィアの実践部隊への説明を終えてきた。
と言っても、ほとんどはワーブラが説明していたのでロワナは立っているだけだった。
「ごめんなさいね。 任せっきりで」
感情のこもっていない声でロワナは隣に立つ青年に声をかけた。
「別に構わない」
隣を歩いていたワーブラはチラッとロワナを見て言った。
「そう。 あなたは優しいのね。 アレスだったらきっと私を叱りつけてたはず」
「あいつそんなにひどいのか?」
「いえ。 ひどいんじゃない。 私にわざと壁をぶつけてる」
ワーブラは静かに少女の話を聞いていた。
「壁にぶつからない人は進んでない人。 あるいは運のいい人、それか自分が進めていないと気づけていない運の悪い人。 そしてその壁を登り切った人は思うのよ。 その壁がどれだけ薄かったかという事を。 ぶち壊せばよかったと」
まっすぐに前を向いて話していたロワナはフっと口元を緩めた。
「アレスからそう言われたわ。 サギな男でしょ? だから私はあいつの事が嫌いなの」
「嫌いなのか?」
驚いた、という顔をしたワーブラがロワナに問いかける。 ロワナはそれに答えず、進んでいた方向を変えた。
「帰るわ。 もうこんな時間」
身勝手な行動だが、ロワナは気にしなかった。



家に帰ると、既にアレスは自室にいた。
「いいわね。 20歳は気楽で・・・・・・」
突如、背後から声がしたのでアレスは読んでいた本を放り投げるほど驚いた。
「な、なんだ!?」
振り向くと立っていたのは山吹色のツインテールに中華のような中世のような服を着た少女。 なによりその目には感情がない。
「ロワナか・・・・・・。 ノックくらいしろよ」
「ノック? それは何の事かしら? 私のこの白くか弱い手であなたのドアを叩けと? ふざけないで頂戴」
機嫌が悪いようだ。
「何を怒っているんだ」
「いつもは出迎えてくれるのに、なぜ今日は無しなの? その前に私は今帰ってきたのよ、労いの言葉くらいかけなさい」
我儘な少女の命令にアレスはすぐさま実行。
「おかえりロワナ。 疲れてないか?」
「ただいまアレス。 疲れたから先にお風呂にいくわ」
踵を返し部屋を出て行くロワナ。 アレスは長いため息をついた。
いつまで経っても子供っぽいな。
「まぁ、あれがあいつの特徴なんだが」
苦笑しながら本を拾い上げまた椅子に座った。
「あいつも仕事か・・・・・・」
ポツリと呟き、本に目を落とした。



「そんなに反則する人はいないわね」
「だな」
夜中、マフィアの実践部隊を監査しながらロワナはつぶやく。
「リス、可愛いわ。 私も飼いたいわね」
「そうか・・・・・・?」
雑談しながら横切って行く人達を見る。
黒のジャケットばかりなので闇に紛れている。
「しかし、雨が降りそうだな。 降水確率は90%らしいし・・・・・・」
「あ、あめ?」
ワーブラの言葉を聞いたロワナは身を乗り出す。
「ん? あぁ。 雨が降るらしいぞ」
「っ・・・・・・!!」
目を見開き、その場から走り出す。
「お、おい!! どこ行くんだ!?」
「雨・・・・・・!! アレスが!!!!」
ヒールを鳴らし、走り去るロワナを追いかけるワーブラ。
予想以上、見かけとは裏腹に足が早いロワナは猫のように夜道を駆けた。
街のネオンが目に入るが、気にせず走り続けた。 今は景色よりも、彼が最優先。
「まだ・・・・・・まだ降らないで!!」
祈るように呟き、先を急ぐ。
「おい!! 何を急いでるんだ!?」
「アレス・・・・・・」
「アレスがどうしたんだ!!!」
少しの沈黙。 ロワナは今にも泣き出しそうな声で叫んだ。
「アレスは雨が嫌いなのっ!!!!!」




汗だくでロワナが運営本部についたとき、雷が轟いた。
アレスの姿を見つけたロワナは必死になって叫ぶ。
「アレスッ!!!!!」
「ロワナ? 一体どうし・・・・・・」
ポツリと。
それはそれは小さな雨粒がアレスの鼻先に落ちた。
「これ、雨か?」
まだ、まだ大丈夫。
ロワナは心に言い聞かせアレスの元に急ぐ。
「だめアレス!!! 早く建物の中に」
少女の声は掻き消された。
小雨が大雨へと移り変わり、大きな雨音が響く。
「あ・・・・・・、雨?」
呆然と立ち尽くすアレスに幼い頃の記憶が蘇った。

『・・・・・・父さん?母さん? どうして・・・・・・。 返事を、返事をしてよぉっ!!!!!!』
動かない血塗れの母親と父親の身体を揺する1人の少年。
降りしきる大雨の中、大きな声で泣き叫んだ。

バシャンと、アレスが気を失い倒れた。
顔からは血の気が失せ、立ち上がろうともしない。
「っ・・・・・・? アレス?」
急いで歩み寄るロワナ。 アレスの体を起こし、彼の名を呼ぶ。
「アレス!! アレス!? ねぇ!! しっかりして、起きなさいよ!!!」
彼は目を開けようとしない。 実際、今のアレスの身体は恐ろしく冷たい。
「うそ・・・・・・。 ねぇ、嫌だよ・・・・・・、起きて、目を開けてよ」
ワーブラはその場から動かなかった。 いや動けなかった。
いま自分が行ってもなんと話しかければいい?
「ロワナ!? 何があったの!?」
彼女の声を聞きつけ、駆けて来たのはラ・パーヌ。
医療専門だ。
「・・・・・・パーヌ!! お願い、アレスを、アレスを助けて!!」
彼女の腕の中で動かないアレスを見て一瞬険しい顔をした後、頷いた。
「最善は尽くすわ」
「お願い・・・・・・します」

この日、初めてロワナは人の目の前で泣いた。


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