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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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ダイヤモンド伝説 5-Ⅱ
~No.20 歩み出す者たち~

トレーニングルーム5では、悪魔を斬る音と床を軽やかに蹴る靴音が響いていた。
「どうですか? 利來くん」
「あぁ、悪くない」
利來はそう言いながら悪魔を何体も斬り倒している。 大きな剣を軽々と振り、呼吸を乱すこともない。
「よかった。 これくらいでも力になれるのなら嬉しいです」
夢架はにっこりと微笑んだ。
「しかしよく思いついたな。 『悪魔の弱点をみんなに見えるようにします』なんて言い始めた時は馬鹿なのかと思っていたが・・・・・・」
「私も最初は無理だと思いましたけど、でもみんなや利來くんのためだったらなんだって出来るような気がします」
利來の右目には半透明の赤いマーカーが現れている。 それを通して悪魔を見ることで、弱点がわかるというわけだ。
さらに、夢架の回復魔法のおかげで今の身体能力を上げてもらっている。 だから息切れもなく剣を振るうことができている。
最後の悪魔を斬り終わった利來は、剣を肩に担ぐ。 そして夢架へと声をかけた。
「魔装の適合率は?」
「さっきのだと36%です・・・・・・」
「やはり、元から記憶を知っている仄花と佐久夜や、魔力の多い蓮や祭星とでは差が出るな」
既に魔装を手に入れている4人に遅れをとるわけにはいかない。
「あの、利來くん。 別に、焦る必要はないと私は思います」
夢架の言葉を聞いて、利來は真面目な顔のまま夢架を見つめる。
「えぇとそういうわけじゃないんです! 私は全く戦闘に参加できないし、こんなこと言える立場ではないんですけど。 でも、利來くんは利來くんのペースでいいと思います」
少し控え目な笑顔で夢架は言った。
出会って間もないのに、なぜかその笑顔は昔から知ってるような気がしてならない。 心が自然と落ち着いて行くのがわかった。
「お前の言うとおりだな」
利來は剣を壁に傾けて置く。 近くにあった椅子に座って、自分の手を見た。
赤くなった手。 この手で色んなものを守っていかなければならない。
仲間はもちろん。 自分の身も守る。
そして。
「?」
守るべきものが増えた。 目の前にいる優しい少女。
「どこか痛いところでもありますか?」
「いや、ちょっと考え事をしていただけだ。 お前はなにも怪我してないな?」
「はい。 悪魔が来たら利來くんが全部倒してくれたじゃないですか」
さっきの戦いで、攻撃のできない夢架を守っていたのは利來だった。
「夢架、お前シールドでも出せるようにすればいいんじゃないのか?」
「それが思ったより難しいんですよ。 前蓮くんがシールドを創ってたんでやり方を教えてもらったんですけど、全然意味がわからなくてさっぱり」
「蓮も祭星も創造魔法だから、常人より何かを創る事が容易いからな・・・・・・」
夢架は「うーん」と言いながら腕を組んだ。 そしてしばらく考える。
「わかりません」
「結論には至らず、か」
苦笑いした利來がそういえばと思いつく。
「祭星はシールドを創るときに毎回、守りたい人の顔を思い浮かべるらしいぞ」
「ほう、やってみますね」
利來から少し離れ、夢架は胸に手を当てて目を閉じる。
彼女の足元に紫色の魔法陣が現れた。 そして夢架を取り囲むように、紫の光がパチパチと軌跡を作る。
「これは・・・・・・」
利來は気がつかぬうちに立ち上がった。
形容し難い程の力。 そう、これは防御魔法ではない。
「やめろ、夢架!!」
叫んだが夢架の耳には届いてないらしい。
「っ、おい!! このままじゃ床が抜け落ちる!」
光の中に飛び込み、夢架の手を掴む。
「!」
目を開いた夢架。 慌てて魔力を抑え、魔法陣を消した。
「はー、びっく・・・・・・り・・・・・・?」
周りをみて夢架は言葉を呑み込んだ。
「それは・・・・・・、こっちのセリフだ」
ボロボロになるまで腐敗された床のコンクリート。 紫色に融解している鉄パイプ。
何よりも、自分の手を掴んでいる利來の手が紫色に壊死しかけていた。
「り、利來くん!!! 今治しますね!?」
「頼む」
あの時のように蝶の紋章が浮かび上がった。 光が消えると、壊死しかけていた手は元の肌色へと戻っている。
「一体なにが・・・・・・」
「夢架、愛ってどんなもなのか知ってるか」
「急にどうしたんですか?」
「前に仄花と祭星の会話を聞かされてる時にあった話なんだけどな」
利來は手の感触を確かめる様に拳を作る。
「愛はいつか愛する者を壊すらしい」
「は・・・・・・?」
「大きすぎる愛ほど、受け止められないだろう? 例えば小さい器があったとして、それにバケツの水を全部入れたらどうなる」
「零れます」
「そうだな。 最悪の場合壊れることもある。 その水の勢いが強ければ強いほど器は脆くなり壊れやすくなる」
「それが、愛だと」
「仄花と祭星に言わせればな。 いや、なにかの本に書いてあったらしい。 だからお前の場合は誰かを守ろう、愛する者を守ろうとする力が強すぎて、今みたいに全てを腐蝕させた」
相当なショックを受けた夢架は青ざめた顔で深刻な表情をしている。
「慈愛はやがて嘆きへ変わる。 ・・・・・・だけどよかったじゃないか。 一応シールドっぽい機能はしてる。 お前になんの怪我もないのなら自分を守っているということはクリアしてる」
「でも誰かを守ることは出来てません!」
「これから守ればいい。 いきなり簡単に人を守ることは出来ないだろう。 守るべき者が傷ついた、自分が守れなかった。 その悔しさを糧にすればいい。 自分は守れているんだから、コントロールすれば他の人間も守れるようになるはずだ」
夢架は下を向いたまま、ポツリとつぶやく。
「私にできるのなら、頑張ってみます」
「楽しみにしてるぞ」
利來は剣を手にして夢架に背を向ける。
「さて、忘れないうちにもう一度やろう。 今度はお前も戦闘に参加してな」
「危ない時はちゃんと守ってくださいね?」
背中を合わせた2人は、クスクスと笑い合った。





秋蘭は目の前にいる少女を呆れた顔で見ていた。 その少女は美味しそうにチョコレートを頬張っている。
「おい」
「ちょっと待ちなさい。 今お食事中よ」
「さっき食べたばっかりだろ!」
「でもお腹が減ってるのよ!」
「大食いかよ!」
「あのね、糖を取れば頭の回転が速くなるの。 知らないの? 常識よ」
少女、百木菜は包装された板チョコを秋蘭にズイッと差し出す。
「なんだよ」
「食べなさいよ。 あたしだけ食べてるのもおかしいじゃない」
ふてくされた顔で秋蘭は板チョコを受け取り、包みを剥がす。 茶色のビターチョコレートを口に入れた。
「不っ味! なんだこれ!」
「苦いの嫌いなの?」
「いやそういう言葉で括りきれないほど不味い」
「もしかして食べるの初めてなの? これは魔力を含んだお菓子よ。 まだ覚醒前の魔力保持者が食べるためのもの」
まじまじとチョコレートを見つめる秋蘭。 外見は普通のチョコレートだ。 この中に魔力が入っているとは誰もわからないだろう。
「これは不味いけど慣れたら美味しく感じるわよ。 でもこれ以上にクソ不味い魔力菓子を知ってる」
「魔力菓子っていうのか。 で、そのクソ不味い魔力菓子は?」
百木菜は鞄から一つの棒付きキャンディを取り出した。 爽やかな水色の包み紙だ。
「これは食べた人の魔力を極端に上げることができるの。 一時的だけどね。 もしも魔力値が40だったら、これを食べて30分くらいは500になるの」
「まるで覚せい剤だな。 でもそんなクソ不味いやつを食う人間なんているのか?」
「あんたの近くにいるわよ。 白石蓮はこれを戦闘前に良く食べてるから。 だからあたしがまとめて買って、蓮に渡してるの」
「バケモンじゃねぇか」
すると百木菜は声を上げて笑った。
「夢架と佐久夜と蓮はバケモンよ。 みんな前世は神様だしべらぼうに強いし。 特に佐久夜なんて、ダイヤモンドに劣ることないわ。 あたしは佐久夜を敵に回したくない」
「どのくらい強いんだ?」
「そーね。 この前の戦闘では使ってなかったけど、触れるもの全部壊す魔法をいつも使ってる。 それに・・・・・・」
声を潜めて、百木菜は言う。
「佐久夜は二つの人格を持ってて、もう一人はまるで同じ人間じゃないみたいなの。 あれは誰にも近寄らないし誰も認めない」
「へぇ」
ガタッと百木菜が立ち上がる。 そして仁王立ちになって秋蘭に指を差す。
秋蘭はそれをひょいと躱し、百木菜を少し見上げる。
「だから! あたし達もさっさと前世を思い出すことが必要! そのためにこれを食べてんでしょーが」
「なんでこれを食べるんだ?」
「あんたそれくらいも知らないの!? 前世を思い出すにはたくさんの魔力が必要なの!」
秋蘭に拳骨を落とす百木菜。 睨む秋蘭をよそに、百木菜は話を続ける。
「あんた、まっつん先輩と利來から前世を思い出す時の話は聞いた?」
「まっつん先輩って祭星のことか? 祭星は実際に過去に行ってそれを体験したけど、会長は少し見えただけって言ってたな」
「そうそう。 それは魔力も関係してるけど、前世に関係のある人物とある程度現世でも関わりを持ってないといけないの。 まっつん先輩がそこまで鮮明に過去を知れたのは、蓮とまっつん先輩が幼馴染で昔から関わりのある者同士だから。 でも利來と夢架は初対面でいきなり前世を知る事になったから見るだけになった。 見るだけよ、知ることはできない」
まぁ要するに。
腕組みをした百木菜は真剣な顔をして言った。
「あたし達は時間がないけど時間をかけて前世を知らなきゃいけない。 それもこの4日間の間で」
「大変だな」
「やんなきゃイリスがどんどん増えて最悪な状態になっちゃう」
秋蘭は頭を抱える。
「それにあのヴァーミリオンとかいう女。 なんなんだあいつは」
ヴァチカンに転送される前、2人が対峙した元軍人のリオンの娘。
彼女の強さは例えようのないくらいだったのだ。
「生きてるだけで良いと思った方がいいね。 あんなにデカい銃と鎌を使うんだもん。 それにあの胃能力は戦うのやになっちゃう」
「あの仕組みはどうなってんだ? 俺が思うのは力を上げるもんだと」
「近いね。 でもその力の拠り所とするものは魔力じゃなくて恐怖や憎しみ。 能力者の憎しみや、周りの人間の恐怖を力へと変えて自分のものとする」
あのとき、秋蘭と百木菜は為す術もなかった。 そして彼女の存在に恐怖したのだ。
しかしその恐怖を力とするヴァーミリオンは、最高の餌場を手にしたにすぎない。
「いつまでも怖がってらんない。 秋蘭、なんとかして覚醒しよ!」
「おう。 俺も誰かに守られてばっかりは嫌だからな」
秋蘭は黒塗りの銃を手にして、前を見据えた。
もっと強く。
そう願って。



黒いトレーニングルームの中。 祭星は戸惑いながら自分を抱いたクラウンに言う。
「あの、クラウンさん?」
「すまない、つい」
パッと祭星を離したクラウンは、帽子を被り直して咳払いをする。
「こんなところじゃ話すのに適してないから、少し外に出ようか。 ヴァチカンの中にはカフェもあるんだ。 それに、私1人じゃ、君に理解させるのは無理だ」
そう言ったクラウンについて行く祭星。 廊下を抜け、オシャレなカフェに入っていく。
「こんな場所がヴァチカンにあるんですね」
「ヴァチカンは空に浮いてるからね。 滅多に下に行けないから、お店も少し入ってるのさ」
クラウンは広いテーブルに祭星を進めた。 椅子を引いて、彼女を座らせる。
「こうやって、椅子を引いて女性に席についてもらう。 細かいことだけれど、英国紳士としては気遣うところだよ。 こういう場では、女性が椅子に触れることのないようにするんだ」
「クラウンさん、英国生まれなんですか?」
「産まれも育ちも英国だったよ。 イギリスは素晴らしいところだけど、君たちにとって食文化は最悪だろうからまだ来ない方がいい」
苦笑いしながらクラウンがメニュー表を取る。 そしてウインクしながら祭星に囁く。
「来る時は、白石と一緒になってからおいで」
「な、なに言ってるんですか!? 別に全然そういうのじゃないです」
「おやおや~? 君は白石の気持ちを蔑ろにするのかい?」
「~~っ! わ、私ココアにします!」
「OK。 私はレモンティーにしよう」
店員を呼び、オーダーをとったクラウン。 レモンティーと聞いて不思議に思った祭星は彼に尋ねる。
「コーヒーは苦手なんですか?」
「ここのコーヒーは私の口には合わないらしい」
店員を帰そうとした時、誰かが祭星の肩に後ろから手を置いた。
「コーヒー追加で頼むよ」
祭星がその男を見上げる。
黒い髪に黄色と赤の目。 白衣を羽織った、妖しい笑みを浮かべた男。
「遅かったな結城」
結城タクミ。 ヴァチカン7冠者で、専属医をやっている。
「あ、あなたは確か」
体育祭の時、祭星とぶつかった白衣の男。
タクミは祭星の隣に座ると、ジッと祭星を見つめる。
「えっと、はじめまして。 私・・・・・・」
「あぁやっぱりキミは面白いニンゲンだ。 本当にフィーダムデリアでの記憶もないし、風貌も性格も全然違う」
「は?」
「似てるのは目の色だけか。 うん良い資料になった。 すぐに研究室に戻ってカルテに書き加えたいところだけど」
微笑んで、しかし目は笑わずにタクミは言った。
「俺もキミもこれじゃ納得がいかないはずだろうから帰れないんだよね」
その目になぜか苛立ちを感じた祭星はタクミから目を逸らす。
「ははは、苛立ってるね。 この変な人は一体誰だって思ってる」
「何を」
「なんでわかってるかって考えてる。 次に言おうとしてる言葉は『あなたは一体何者ですか』 いいよ、その答えを教えようか」
心の中を見透かされたかのようだ。 タクミは微笑みを絶やさずに言った。
「俺はサトリ。 人の心の中を読み取る妖」
「サトリ・・・・・・?」
「こんなことまで忘れてしまってるとはね。 クラウン、話すのはこっちからでいいかい?」
「構わん。 私は適当に時間を潰すさ」
クラウンは席を立った。
それを見て、タクミはフフッと笑った。 そして祭星にナイフを向ける。
「今から俺が言うことは全部本当のことだよ」
ナイフを見つめて、祭星が頷く。
「俺はキミとずっと前に出会ってて、同じ組織にいて、喧嘩もする仲だった」
目を見開く祭星にタクミは続ける。
「その組織にいて、キミは戦闘員だった。 俺は研究員でさ、よくキミと喧嘩してたんだけど」
「なにを言っているんですか?私は」
「そうさ、キミは忘れているんだ。 キミが現在で行ったことを。 過去であった出来事も全てね」
だから。 とタクミは祭星の心臓にナイフを突き刺した。
「思い出させてあげよう。 キミが行った事を全部」



~No.21 七つの刀~

源三郎の後ろをついて行った蓮は、ヴァチカンの1番下にある部屋へとたどり着いていた。
古い扉を開けた源三郎は、蓮を先に進める。 中は埃っぽく、木箱やら包みやらが沢山置いてあった。 そう、いわゆる倉庫だ。
「すごいところですね」
「ここはヴァチカンが所有する武器や書の中でも、最も重要なものを置いているんだ。 さぁ、こっちだよ」
前に進んでいく源三郎。 それの後を追うと、布に巻かれた長い棒のようなものが立てかけられた部屋に出た。
「ここが?」
「そう。 君に授ける刀がある場所だ」
ゴソゴソと、奥から刀を取り出した。 そしてそれを蓮へと渡す。
「触っても?」
「大丈夫だ」
群青色の布で厳重に保管されている刀。 布にはお札のようなものが何枚も貼られている。
蓮はその刀を掴む。
中指と人差し指が少し触れた瞬間、札が弾け飛び、布は花びらのように白い光と共に開き始める。
その白い光の中、黒い何かが飛び出した。
黒い何かは翼を持っていた。 蓮の頭上を飛び、肩へ羽根を下ろす。
『貴殿が我の新たな使い手であるか』
鴉だった。 漆黒の羽根を持った、大きな鴉。
「お前は・・・・・・」
『我が名は小烏丸。 我はこの刀の化身である。 さぁ刀を取れ。 貴殿の望む色を黒へと変えよう』
蓮は言われるがままに刀を今度こそ掴んだ。 すると光が収まる。
『我はいつも貴殿のそばにいよう。 我を使いこなしてみよ』
鴉は大きく翼を広げ、刀へと戻って行った。
「なんだったんだあいつ」
「ははは。 さぁそれだけじゃないんだ。 この5本も君に渡そう」
「5本!!? そんなに持てるわけ」
「大丈夫」
そう言われ押し付けられた5本の刀。
大典太
鬼丸
数珠丸
童子切
三日月宗近
すべて、有名な刀。
「これって確か」
「そう。 アレ」
「えーっとなんでしたっけ。 思い出せない」
「こういうのは杯くんが詳しいだろうね」
源三郎はまた違う刀を手にしている。
「それは?」
「おっと。 これは君に渡すものではないよ」
身の丈を超える大きな刀。 刀というより大剣に近い大きさ。 だが、刃は大剣ほど太くない。
「この刀の名は『餓狼刀』 その名の通り餓えた狼が宿る刀。 あまりに手に負えないから、今回とある者に手渡すことになってる」
「それ斬馬刀ですか」
「よくわかったね。 まぁこんなに大きな刀があったらおかしいからね」
源三郎はその刀を持って、出口へと進む。 蓮も6つの刀を手にして、前を向いた。




真っ黒な場所にいた。
そこに祭星は1人で立っていた。 周りも真っ暗、何もない。
下を向き、自分が何をしていたのか、思い出していた祭星は、突然自分の目の前に見えた靴に驚く。
それを辿るように前を向くと、少女が立っていた。
自分と全く同じ顔の少女。
だが髪の色が少し違った。 向こうは群青色をしている。
「やっと会えたね。 もう1人の私」
「は・・・・・・?」
「今回ばかりはあのカラスさんに感謝しないと。 嫌な人だけど、こうやってキミに会えたし」
うんうん と頷く少女。 そして祭星ににっこりと笑う。
「私の名前は群青のクレアシオン。 あなたが創ったあなた。 私はあなた、あなたは私」
「ちょ、ちょっとまって、わけがわからない」
「うん。 じゃあ説明するね」
クレアシオンと名乗った少女は、指を振る。 すると黒かった周りが空へと変わった。
白い雲も見える。 綺麗な空。
「私はあなたから創り出された。 それはあなたがまだ小学校4年生のころのお話」
祭星に近づいたクレアシオン。 そして続ける。
「ねぇあなたは私とどこが違うと思う?」
自分とクレアシオンとで全く違うこと。
「私とあなたは、全然性格が違うような気がする・・・・・・。 私そんなに明るくない」
「うんご名答! だってそれはあなたが "楽しさ" と "嬉しさ" を私にくれたから。 祭星、キミは私を 楽しさと嬉しさを合わせてつくってくれた」
何を言っているんだろう。 祭星はそう思った。
「キミは小さい頃、とても明るくて元気な子だった。 人見知りもしなかった。 だけどだんだん人間が信じられなくなった。 よくあるよね、性格が変わっちゃうこと。 もう小学校4年生の時には、キミは楽しさも嬉しさも分からなくなってた。 そして、4年生の時、羽衣仄花と出会った」
クレアシオンはニコニコと笑みを浮かべている。
「キミは直感的に感じた。 『この子は自分と同じだ。 自分と同じ、いやそれ以上の力を持っている』って。 そう、キミはもうあの頃から能力が覚醒してた。 だから仄花の驚異的な魔力に気がついた。 それで、仄花から気づかれまいと、キミは魔力のほとんどを固めて、私を創った。 あなたがわからなくなってた、楽しさと嬉しさを私に渡して」
だからそうでしょ?
クレアシオンは祭星の心臓に手を当てる。
「キミっていつも笑ったりしてるとき、心は泣いてる。 本当の楽しさと嬉しさを知らないから。 仲間と一緒に笑ってても、本当は心にそんなこと思ってない。 いつもいつも悲しさと切なさと憎悪が混じってる」
「ち、ちがう! 私は」
「じゃあさ」
祭星の耳元で、クレアシオンが囁く。
「なんで泣いてるの??」
「ーーっ!!?」
「可哀想な私。 でもありがとう私。 そしておめでとう私。 キミはやっと本当の力を手に入れることができるんだよ」
クレアシオンが祭星を抱きしめた。 するとクレアシオンは光に包まれ、祭星の身体を包む。
光が消えた。 そこにはもうクレアシオンの姿はない。
「あれ?」
『いないのは当たり前だよ。 だってもう私はいないんだもん。 大丈夫よ、楽しさも嬉しさも、私に返したから』
頭にクレアシオンの声が響く。
『記憶は上乗せされる。 私がクレアシオンとして記録したもの。 リオンさんのことや、フィーダムデリアのこと。 楽しさも嬉しさも、ぜーんぶ100倍にして返すよ』
声がだんだん小さくなって行く。
『ほらもう私は消える。 もう大丈夫。 今度は心から仲間と楽しんで。 本当の彼との再開を嬉しく思える』
「私はわがままだったんだね。 もうあの頃は全く覚えてないの」
『私も私を創った時の記憶はないよ。 それに、わがままなのはお互い様だと思うな』
クレアシオンが続ける。
『私は私が私でいるために、色んなことをして、力を奪われた。 抵抗して抵抗して、最後は取り上げられて、本当に好きな人も偽りの愛もわからないまま、永久に彷徨う人形へと成り果てた。 それはあなたには関係ない話だけど。 さぁ、行って』
一歩踏み出した祭星。 しかしクレアシオンがそれを止める。
『まって。 あのね、最後に、タクミさんに言ってほしいんだけど』
消えかけた声でクレアシオンが言う。
『目、治してくれてありがとうって。 それと、あなたがとびきりおいしい筑前煮、また作っ・・・・・・て、あ、げ・・・・・・』
声は、そこで消えた。
「ありがとう、クレアシオン」
祭星はそう言って、大きな空へと手を伸ばした。



「ぬはっ!」
テーブルをダンッと叩きつけ、祭星は立ち上がる。 そして目をぱちくりさせながら、周りを見渡した。
「遅かったね」
隣では本を読んでいるタクミがいた。 コーヒーカップは既に底が見えている。 そしてその横にはナイフが。
「全部思い出しましたよ」
「へぇ」
「私とタクミさんはずっと喧嘩してたんですね」
「そうだよ」
「・・・・・・目を、治してくれたんですよね」
祭星はつけていたメガネを取る。 遠くまで見えるようになった両目。 もうメガネは必要ないだろう。
「ありがとうございますって、クレアシオンが言ってました」
「キミみたいなお子様がねぇ」
「なっ」
ガシャンとコップが跳ぶ。
「誰がお子様ですって、このカラス!」
「お子様はうるさいね」
「きぃぃい! もういいです! どっか行ってください! ありがとうございました、助かりました!」
ふんっ と腕を組んで祭星がそっぽを向く。 そんな祭星の視界に蓮の姿が入る。
「あっ、れーーーーん!!」
手を振りながら祭星は蓮の名前を呼ぶ。
蓮はこちらを向くと、無愛想な顔のまま手を振りかえした。
「こんなところで何して・・・・・・、あ、結城先生」
「え、知り合いなの?」
「知り合いも何も、ここの医師だろ・・・・・・」
お子様が2人になった。 とタクミは本を閉じながら言う。
椅子から立ち上がり、彼は出口へと向かう。 その途中で足を止め、蓮へ言った。
「その心に思ってる気持ちまだ伝えないのかな?」
茶化すような言い方。 蓮は肩を竦めてつぶやく。
「言ったところで、お子様はわからないでしょう」
タクミはおもしろそうに笑って、カフェを出て行った。
「はっ!」
それを見ていた祭星は、思い出したように立ち上がる。
「ちょっと待ちなさいよカラスさん!! お会計、コーヒー代!」
「もう帰ったぞ」
「はぁぁあああ!?」
祭星、いやクレアシオンは大きなため息を吐いた。

Ⅲへ続く
















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