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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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革命のひずめ
その3です




革命のひずめ




女王が短刀を懐にしまうと、ジャックは立ち上がった。 そして自分達が長いこと暮らしてきた城を睨む。
「あの城がこんなに憎く思えるのは、心が痛みますね」
「そうね・・・・・・。 早く革命軍と出会いましょう」
再び走り出した2人。 行く当てはない。
「こんなに走って、明日は筋肉痛ですね陛下」
「しばらく運動なんてしていませんでしたから・・・・・・、少しでもフェイシングくらいのお稽古はやっておくべきでしたわ」
まさかこんなことになるとは思わなかったから。
女王はそう言い足す。
悲しそうな顔を見て、ジャックは表情を曇らせる。
「っ!!」
だがその表情も兵の足音を聞いて変わった。 真横から飛んできた矢から女王を守る。
「・・・・・・少々こちらに不利がありますね」
「少々どころじゃないですわ・・・・・・」
周りを取り囲んだ10人程の兵士。 ジャックはフォークとナイフを両手に構え、兵達には聞こえないように女王に言う。
「僕が兵を撹乱させます。 その隙に陛下は逃げてください」
それだけ言って返事は聞かずにジャックは地を蹴った。
流れるような動きで、襲いかかる兵を躱し、目元や首にナイフを刺す。
女王はジャックを見て、改めてすごいと思っていた。 その時、ジャックの後ろから倒れたはずの兵が剣を振りかざしているのを見つけた。
「ジャック!! 後ろですわ!」
女王の悲鳴にも似た警告、それを聞いたジャックは急いで振り返るものの、まともに攻撃をうけてしまった。
地面に倒れ込んだジャックの胸ぐらを兵は掴み上げる。
「あなたたち・・・・・・わたくしの大切な騎士によくもっ!!!」
「くるなっ!」
駆け寄ろうとした女王をジャックは止めた。
そして血まみれになった手で兵の腕を掴み、枯れた声で女王へと告げる。
「僕のことはいい、あなたは早く!」
「でも!」
失った左眼。 それを隠しながらジャックはまた叫んだ。
「早く行け!! あんたがこの国を支えるんだろ! あんたの足で立って、歩いて、走って! 大切な夜空を取り戻せ!!」
「っ・・・・・・!」
ジャックの言葉をうけ、女王は涙を流しながら踵を返して走り出した。
「あー・・・・・・。 つかれた」
女王の背中を見届け、ジャックはつぶやく。
兵はジャックに向かって剣を構える。
「お前に殺されれば、全部終わるのかな。 あぁでも、それじゃあティアー様を守る人がいなくなってしまうなぁ」
うわ言のように呟きながら、ジャックは女王と出会った頃を思い出した。



ジャックが女王と出会ったのは、まだ女王が12歳の時だった。
まだその頃はとても元気な少女で、気品というよりただ一言元気、というのがお似合いな、そんな少女だった。

「あなたが私の執事? よろしくね!」

そういって小さな手を差し出してくれた。
あの時は自分は22歳で、まだまだ若造にすぎなかった。 そんな自分にかけてくれた言葉を今でも覚えている。

あれは確か初めての街へのお買い物の時だった。
途中から雨が降り出して、ジャックは持ってきていた傘で女王が濡れないようにと気を使っていた。
「さぁもう帰りましょうティアーさま。 お母様もお父様も心配していらっしゃいますよ」
「まって、あの店に行くわ!」
「何を買うのですか?」
「傘よ!」
「ティアーさま、傘ならすでに持っていらっしゃるではありませんか」
「何を言っているの? あなたの傘よ! 私は濡れてないけどあなたは濡れてるわジャック。 私が選んだ傘をもらえないっていうの?」


買っていただいた傘。 今でも大切に持っている。
青い、レースのついた傘。
あの時は執事としての仕事が難しいと思いながらも、女王のそばにいるのが嬉しかった。


それから2年たって、国王と王妃が亡くなられた。


あの日の女王はかたく心を閉ざしていた。
14歳の女王が、どんなに重い荷物を
どんな辛い現実を受け止めただろう。
ただただ「お父様、お母様」と泣き叫ぶ女王。
あの小さな小さな手で、綺麗な手で、亡くなった両親が残した王座を掴んだ女王は
悲しみの女王はその名にふさわしい涙を流し、泣くことしかできなかった。


「わたくしはこれからどうすればよろしいのですかジャック」


女王が傀儡へなった日、最初に発したのはその言葉だった。


「言われた通りにやればいいのでしょうか。 操り人形ならば少しは気が楽になるかもしれませんね」


自嘲めいた笑みを、女王は浮かべる。
女王にジャックは言った。


「ティアー様は一人ではありません。 僕も姉も、お父様もお母様も見守っています」


どんなに女王が傀儡になろうとも、ジャックは一生女王のもとにいようと決めた。

だから


「まだ死ねない!」


ジャックは長い足で兵の顔を蹴たぐる。 鎧が砕け、現れた人間の顔にフォークを突き刺す。
「うわぁぁあああ!!」
兵はジャックを離し、顔を抑えて呻き声をあげた。 そんな兵にもう一度蹴りを入れる。
最後の一人を始末し終えたジャックは、よろけながら女王の後を追った。
鮮血を地面へと垂らしながら。




女王は走っていた。
ジャックと別れた後、また兵に見つかったのだ。
「いたぞ! 女王だ!」
「もう・・・・・・粘り強い人たちですわ」
女王は近くにあった豪華な民家の塀にやっとのことで登る。
「ごめんなさい。 今は許してください」
そうつぶやき、塀の下を見た。
「た、高すぎですわ・・・・・・!」
地面までがとても離れているように思えた。 だが後ろから徐々に迫ってくる兵の声を聞いて、意を決したように一歩踏み出し、ぴょんとジャンプした。
「ひい~~っ!!!!」
長いスカートを抑えて女王はなんとか綺麗に着地できた。
安心するのも早々で切り上げ、何処か隠れる場所はと辺りを見回す。
ふと目に止まったのは木の下に積まれた小さな枯葉の山。 女王はそれを掻き分け、枯葉を頭からかぶり、身を潜めた。
「くそ、見失ったぞ!」
「ここはつきあたりだ、右へ行け! 必ず捕まえろ!」
兵の声も足音も聞こえなくなって、少しして女王はこっそり顔を出した。
まわりには誰もいない。 ため息を吐いて立ち上がる。
服についた枯葉をはらい、また塀を登った。
来た道を戻ろうとしたが、それをやめ、近くの民家へと入る。 今は誰もいない古い民家だった。
そこに飾ってあった、前国王の小さな肖像画を見て、女王は埃まみれの長い椅子へ倒れこむ。
彼女は憔悴しきっていた。 もう足は鉛のように重い。 走る気力さえない。
「ごめんなさい・・・・・・」
舞い落ちる埃とともに、女王の手が力なくダラリと落ちた。


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