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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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懐かしい話
追記より高校に入る前の譲葉と燐太郎の話です


懐かしい話




「お兄様、お兄様。 朝ですよ。 起きてください」
寒さも残る3月上旬。 珍しく燐太郎は朝寝坊をしてしまった。
「・・・・・・」
布団から起き上がった燐太郎はボーッと目の前にある襖を見ていた。 そして壁にかけてある振り子時計を見て、一気に目が覚める。
「すまない譲葉!」
「いいえ、まだお店は開店前ですから全然平気ですよ。 もう準備は終わりましたから、ゆっくり支度をして店にいらしてくださいね」
淡い黄緑色の袴を着ている妹の譲葉はにっこり笑う。
雨戸を開け終わった譲葉は燐太郎の部屋から出て行く。
「・・・・・・なんか変な夢を見ていたような」
長い前髪をかきあげ、燐太郎は夢を思い出そうとしたがなにも思い出すことはなかった。
「さて、持ち場に行くか」
布団をたたみ、燐太郎は袴へと着替える。 長年袴を着ていた彼にとって、着付けは簡単だ。
髪を結び、部屋の電気を消すと廊下へと出た。
客室と茶の間を通り抜け、厳重に鍵をされている扉を開く。
甘く香ばしい匂い。 朝日が差し込む店内。
ショーケースにはすでにカステラが並べられている。 試食用のカステラ、お茶も用意されていた。
「譲葉、あとは私がやろう」
「おはようございますお兄様。 でももう珈琲だけですから大丈夫ですよ。 あっ、では看板を出してもらえませんか? もう9時なので」
「了解した」
店先に出た燐太郎は雨が降っていることに気がついた。 もう3月だというのに肌寒い。
「今日は冷えるな」
「えぇ。 先ほどラジオで昼からは雪が降るとおっしゃってました」
「忘れ雪か」
「ふふ、お兄様は雪がお嫌いでしたね」
「譲葉は好きなのか?」
「さぁどうでしょうか。 嫌いといえば嫌いなのですが、でも悪くないと思っています」
譲葉は珈琲豆を棚に入れようと小さな脚立に登る。
「あっ」
足を滑らせ譲葉は後ろに倒れこむ。
「譲葉!」
即座に駆けつけた燐太郎は、譲葉が床に倒れる前に受け止め、安堵のため息を吐いた。
「申し訳ありませんお兄様」
「怪我がなくてよかった。 貸してくれ、私が入れておこう」
珈琲豆を受け取り、燐太郎は脚立を使わずに棚へと手を伸ばす。
「・・・・・・」
「いじけるな譲葉。 お前の身長はきっと伸びる」
「なぜお兄様だけそんなにお高いのですか、双子なのに」
「お前がじゃがいもを食べないからだ」
「それを言うならお兄様だって葱を食べないからいつまで経ってもカステラが作れないのですわ!」
「なぜお前はじゃがいもを否定する!」
「なぜお兄様は葱がお嫌いなのですか!」
睨み合った兄妹、その時、振り子時計が鳴り響く。
「開店ですわ」
「そのようだ。 譲葉、この話は今日の夜だ」
「えぇ。 きっちり決着をつけますわ。 晩御飯の後に」
「今日は肉じゃがと言っていたぞ」
「認めません認めません認めません認めません認めません!」
「譲葉、時には折れることも大事だぞ」
「たとえお兄様でも、この葱への愛はやめることなどできませんわ!」
「葱などやめてじゃがいもにしろ」
「許しませんわ・・・・・・! 私葱と結婚します!」
「認めんぞ! お前を葱など常識のなってない輩にやらん!」
「葱の何が悪いというんです!」



それから2人は父に怒られたとさ。


END
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