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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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女王の決意
追記より2ndミッションの小説です
空が騒がしい。
灰色の空が、戦場にでもなっているのだろうか。
ティアー女王は何も知らなかった。
いや、何も知ることが出来なかった。
『ティアー様、この離宮から絶対に出てはいけませんよ』
7年間共にいる執事のジャックからはそう言われているだけだ。
女王はしばらく本を読んでいたが、どうしても集中できない。 大きなため息をついて顔をあげた。
・・・・・・なぜ。
なぜ自分にはなにも伝えられないのだろう。
女王だというのに。
国王の姿を小さい頃から見てきた自分には、一つの目標があった。
あの国王のように、国のことを考え、国民の声に耳を傾け、手を差し伸べる。
そんな女王になりたかった。
なりたかったのだ。
所詮自分はマリオネット。 操られる運命。 自己主張など、きっと許されない。
「ティアー様、お茶をお持ちいたしました」
気がつけば、ジャックがテーブルにお菓子やティーカップを並べている。
注がれた紅茶の水面を見ながら、女王はジャックに尋ねた。
「ジャック、外で何かあっているのですか?」
「・・・・・・大丈夫です、ティアー様が心配することではございません。 さぁどうぞ、今日のケーキはチーズケーキでございます」
そう言われて綺麗な小皿に乗せられた美味しそうなチーズケーキ。 いつもならおいしく頂いているところだ。
だが、あろうことか、女王はその小皿を掴んで、おもいきり床に叩きつけた。
皿の割れる無惨な音が部屋に響く。
ケーキは皿の破片が混じって、もう食べることは出来ないだろう。
「ティアー様? どうなされましたか?」
ジャックは皿の破片を慌てて拾い集める。
女王は椅子から立ち上がり、ジャックに問いかけた。
「ジャック、なぜ嘘をつくのですか?」
女王の聞いた事もない冷徹な声に、彼は手を止める。
「わたくしと7年間共に歩んできた執事が、わたくしにそのような嘘を吐くのですか。 気休めのつもりですか、わたくしのためにと、小賢しい嘘をつくのがあなたの役目ですか?」
片膝をついていたジャックは立ち上がった。 そして、光のない女王の瞳を見た。
憤っているのだ。 女王は。
自分自身の情けなさ、惨めさに。
「もう一度だけ聞きます、ジャック。 外で何かあっているのですか? 『はい』か『いいえ』で答えなさい」
「・・・・・・ティアー様」
「わたくしは『はい』か『いいえ』で答えなさいと言ったはずです。 他の言葉は聞きたくありません」
「はい」
ジャックの言葉を聞いて、女王は微笑んだ。
「それだけ聞ければ、わたくしは十分です。 何がとは聞きません。 それはまだわたくしが首を突っ込むことではないでしょう。 申し訳ありません、折角のケーキを台無しにしてしまいました」
女王がしゃがみ込み、皿の破片を集めようとしているのを見て、ジャックは慌てて止めた。
「おやめください! ティアー様の御身に傷がついてしまいます!」
女王はクスクスと笑って、ジャックに言う。
「ジャック、あなたはいつもわたくしの事を考えてくれますね。 ありがとう。 とても嬉しく思います」
「ティアー様?」
「わたくしは本当に馬鹿でした。 こんなに支えてくださる方がいらっしゃるのに、それに気づかなかった。 文通をさせていただいているセシリオ様だって、他のメイドの方や執事の方だってわたくしを支えてくれていました。 特にジャック。 あなたはわたくしがお忍びで街に行った時、後ろからずっとついてきてくれましたね?」
「な、なぜそれをお分かりに・・・・・・」
「丸分かりですわ。 それに、お出かけ用のドレス。 着た後に綺麗に洗濯されていました。 わたくしのドレスはあなたが洗っていますから」
靴音を鳴らしながら、女王はベッドに向かう。 そして枕元に置いていた、届かない父と母への手紙を手にする。
それをみて、女王は迷いなく破り捨てた。
「過去に依存するのはもうやめます。 国王はもういないのです。 いつまでも父と母を想って、悲しみに暮れて泣いているだけではいけません。 それに」
つけていたティアラ。 そのティアラを外し、ジャックに渡した。
途端、女王の周りに浮かんでいた夜空が消え失せる。
「晶石などで作る、偽りの夜空などもう必要ない。 夜空はわたくしの手で掴んでみせます。
わたくしは女王。 たとえ傀儡の女王だとしても、一国を担う女王。 弱き者に手を差し伸べ、死と戦う者に寄り添う、それこそがわたくしの思い浮かべる女王。 わたくしの理想」
胸に手を当てて、女王は言った。
ジャックは自ら決意した女王をまぶしそうに見つめる。
今までにない気品を漂わせる女王。 なぜかジャックは目に涙が貯まった。


「もうなにも恐れるものなどない。 わたくしはわたくしの道を行きましょう」


NEXT Mission
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