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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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ヴァーミリオンとまりもの楽しい実験教室
ヴァーミリオンとまりもの楽しい実験教室

出演人
ヴァーミリオン・レベッカ
まりもくん (雑子さま)



軍に入って2年経ったある日。
その日は土砂降りの雨だった。
帰宅時刻となり、自分の大切な小型端末やパソコンを防水バックに詰め込む。
精密な機械だ。 濡れたら大変なのは承知している。
青い傘を差し、いつもの帰り道を急いでいると、大きな木の根にうずくまっている子供に目が付く。
・・・・・・うそ。 ここは軍の敷地内だよ? 子供が迷い込んでるなんていままで聞いたことない。
子供は緑色の短い髪で、歳は恐らく10歳くらい。
もしかして傘がないから帰れないのかな。
そう思うと、その子にゆっくり近づき目線の高さくらいに腰を下ろす。
「ねぇ、君。 どうしたの? こんなところで」
声をかけるとその子は顔をあげた。
幼さない顔立ち、愛らしい目。
子供だ。
「ここはヴェラドニア軍っていってね、関係者以外入れないんだ。 もしかして迷子? 家はわかる?」
そう言うと、子供はにっこり笑う。
「僕は大丈夫!! ただ、雨が降ったからここにいただけだよ」
「そっか・・・・・・。大変だね、どうしようか・・・・・・。 あ、そうだ!! この傘、使って?」
差していた傘を目の前の子供に渡す。
濡れちゃいけないのはパソコンと端末だけ。
「でもそれじゃあ、お姉さんが」
「ううん。 私は大丈夫。 走って行けば間に合うから」
それだけを言うと立ち上がり、雨に打たれながら家に急いだ。
あえて後ろは振り向かない。 もしかしたら傘を返されるかもしれないから。
あんな小さい子だもん。
免疫力も低いはず、だったら私が1時間雨に濡れるくらいどうってことない。


軍から家まではおよそ20km。
普通なら交通機関を使って帰るけど、ずぶ濡れじゃ話にならない。 そのまま走って帰る。
軍で嫌というほど鍛えられた体力がこんなところで役に立つなんて思ってなかった。
それでも走りながら考えたのはあの子の事。
ちゃんと家に帰れたかな? 寒い思いはしてないかな? 送った方が良かったかな?
後悔先に立たず。
こみ上げてきた咳を抑えながらひたすら走る。
体温が低下してきてるけど構わない。
あの子が家に帰れたなら、それでいい。


家につき、ずぶ濡れのままリビングに入ると父はギョッとしてタオルを渡してくれた。
「傘はどうしたんだ? いつもよりも帰りが遅いじゃないか」
「色々・・・・・・へっくしゅ!! あったの」
それだけ言うと自分の部屋へ行き、閉じこもった。


「あれ・・・・・・? おかしいな。 昨日までは正常だったのにな」
次の日は雨も止んでいて、服が濡れる事もなく軍に行けた。
だが、そこからが問題。
雨に濡れた端末が動かなくなっていた。
「昨日の雨でやられたかな・・・・・・?」
「USBだけで試してみたら? そこまで水が入り込んでなければ無事な筈」
同僚から言われ、その通りにしてみた。
慎重にUSBを抜く私に同僚は笑ながらパソコンを用意してくれていた。
はめて、電源を押すと見事に立ち上がった。
「おぉ!! 良かったぁ・・・・・・」
「大切な親機は全滅だったけどね」
「それは仕方ないよ。 ちょっと休憩もらうね。 外の空気も吸いたいし」
行ってらっしゃい
と手を振る同僚にお礼を言ってから外に出た。
外は昨日の豪雨がまるで嘘のように晴れわたっている。
何度も確かめたが、あの子はいなかったからもう帰ったのだろう。
と思ったその時。
「お姉さーーーーんっ!!!」
「ん? なんか聞いたことある声・・・・・・!!?」
振り向いたら、昨日のあの子がこっちに向かって走ってきているではないか。
しかもなんか手に持ってる!!!?
片方は傘だけどもう片方が、何アレ!?
緑色の物体。 あれはコケかしら?
「こんにちはお姉さん!! 昨日はどうもありがとう!!」
ひょこっと頭を下げる子につられ、こっちまで下げてしまった。
「え? え? ど、どういたしまして・・・・・・」
「お姉さんにお礼!! この化石、さっき拾ったんだ!!」
そう言われ手渡されたのはあの緑色の物体。
へぇ、これ化石なんだ。
家に帰って分析でも・・・・・・ん?
この茶色くてうにょうにょした生物は何? 形と触り心地からして・・・・・・。
「¥&@%$€#☆※!?!?!?」
ミミズだ!!!!!!!!
ミミズがどうしても触りきれない私は声にならない絶叫と共に思わずその化石を放り投げた。
「あー。 ミミズが飛んでった」
「はっ!!? ごめんね!! 放り投げちゃって、今からとってくるね!!」
「ううん。 だいじょうぶ!! あれ、よく見つける化石だから。 それよりお姉さん、僕と一緒に化石掘りに行こうよ!!」
言い終わるや否や手を引かれる。
小さいのに結構力がある・・・・・・。
「ちょ、ちょっと!! ええと・・・・・・」
名前が分からずに口籠るとその子は振り返って、笑顔でこう言った。
「まりもだよ!! 僕、まりもっていうんだ!! お姉さんは?」
「まりもくん? 私はヴァーミリオン。 えっと、長いから ミリオン って呼んで?」
まりもくんは元気良く頷くとそのまま森の方に入って行った。
私もそのあとに続く。
「やっぱり森の空気は新鮮だねー」
「そうだね。 私、ずっと研究室に閉じ籠ってるから、気分転換に良いかも」
伸びをしながらそう言うとまりもくんは目を輝かせながら尋ねてきた。
「研究!? じゃあ、古代の生き物とか調べたりするの!?」
「あ、あー。 するけど、私は古代生物専門じゃないんだ。 生物って言っても色々あってね。 私は遺伝子とかそういう分野なんだ。 簡単に言うと、ほら。 動物の肝臓とか心臓とかをホルマリン浸けにしてるのがあるでしょ?」
「うーん。 よくわかんないけど、あの緑色の液体っぽいやつかな?」
「ちょっと違うけど、そんな感じ」
子供にホルマリンは分かる筈ないか。
因みにパソコンは得意だったりする。 研究者として、パソコンの一つも扱えないのなら初心者も良いとこだ。
でも
「どうして古代生物?」
「可愛いよね!! 僕、化石を甦させるのが得意なんだ!!」
驚いた!!
この子の異能はかなり使い勝手がいい。
研究者の私としては交代してほしいくらいだ。
「でもね、化石に話しかけてるのを家族に見られちゃったんだ」
「あ・・・・・・。 そっか」
おそらく、病院に連れていかれてそこから抜け出してきたんだろう。
小さいのに、苦労してるんだな。
と、つくづくおもう。
「でさ、まりもくん」
「なぁに? お姉さん」

「ここ、どこだろうね」

気付けば森の奥深くまで入ってきてしまっていた。 この辺は来た事ないし、方向音痴な私に分かるわけない。
頼みの綱はまりもくんだけだ。
「・・・・・・ごめんね。 僕もわからないや」
希望は簡単に打ち砕かれた。
「やばいやばいやばい!! 地図もないし、どうやって帰ればいいの!?」
頭を抱える私の肩にまりもくんは手を置く。
「だいじょうぶだよ!! 僕もいつもこんなかんじだから!!」
「全部大丈夫じゃなーーーーいっ!!!」
そんな悲鳴が森中にこだました。
こんなとき、なにか電話があれば。
・・・・・・ん? まてよ。
「ある」
まだ希望はある。
まりもくんの手を握り、にっこり笑った。
まりもくんはわけがわからないと言うように目を瞬かせた。
そんなまりもくんをよそに、私は異能を発動させる。
「・・・・・・お願い。 繋がって」
必死で祈りながら、会話の相手を探す。
私の異能、コミュニケーションは遠く離れた相手とでも話せる。
だから、物知りな同僚に道を聞けばいい。
『・・・・・・も、しもし? ヴァーミリオンなの?』
ノイズ混じりの同僚の声。 電波悪いけど、繋がった!!
「道に迷ったの!! 森の奥。 道を教えて!!」
『なんでそんなとこいるの!?』
「話は後!! お願い!!」
『・・・・・・そこを真っ直ぐ』


軍の研究室についた時は夕暮れ時だった。 私は同僚や、上司にたんまりと怒られたが、バッグの中に眠っている帰り道に探した化石を思うと、どうってことなかった。
まりもくんはその後、何度も森に来てくれた。
まりもくんと一緒に遊んだり、化石を見つけるのが毎日の日課だ。
あれから6ヶ月。
もう少しでゲームが始まる。 これからは研究に集中しなくてはいけないし、軍の警備もいつも以上に厳しくなる。
まりもくんともしばらく会えなくなる。
「お姉さん。 ゲーム終わったらすぐにくるからね!!」
「うん! 私も早くまりもくんと遊びたいもん。 これ、お守り。 大切に持っててね」
そう言って手渡したのはペンダント。
黒曜石のペンダントは黒光りしていた。
「わぁ!! ありがとうお姉さん!!」
「また遊ぼうね!!」
「うん!!!」
まりもくんは満面の笑みを最後に見せてくれた。

Fin
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