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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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O-GASUTO
No.001
O-GASUTO

はじまりはいつも歌姫から



歌が。
歌が聞こえる。
風に乗って 子守唄の様に。
微かに、優しく、響く。
歌は伝える。
この世界は、もう終わりだと。 終わるんだ。全てが。
草も花も森も動物も川も山も。
全てが支配されてしまう。 自由のない光のない。
真っ暗闇の哀しい世界になる。
歌は、調は 彼の耳に届いた。 1人の魔王の元に。
「終わりか。 もう終るのか。 長く続いた人間界が」
もう何十年、何百年眠り続けただろう。
寝ていた魔王は目を覚ました。
細く 赤紫に光る双眸を瞬かせ、魔王は続ける。
「何百年寝たのか、覚えもしない。 闇に閉ざされたここでは時が分からないな」
魔王は自分の手を見つめ、つぶやく。
「さぁ、早く俺を呼び出せ、約束の時だ。 お前にはわかるだろう? 奏魔。否、お前にしか分からないだろう?この地の叫びが」
魔王は立ち上がり、長年抑えていた魔力を開放した。
あっという間に周りは魔王の持つ蒼い魔力に染め上げられる。
「歌姫は歌う。 謳歌を。 名を呼べ、奏魔。 俺の名を呼べ。 雷の魔王 雷魔 の本当の名を」
魔王はそう言うなり、不敵に微笑った。


人間界と魔界。 2つの世界で成り立つ。
人間界は弱い。 人間は弱い。
どんな兵器を生み出そうとも、どんなに強くなろうが、悪魔には勝てない。
それが運命だからだ。
運命に抗う事が出来るのは 神のみ。 人間は神ではない。ましてや、この世界を支配しているわけでもない。人間界の90%は悪魔に支配されている。
しかし。 そんな神が人間に与えた最後の手段。
魔王の堕とし子だ。
たった2人の堕とし子で世界は変わるのだ。
1人は 命を操り。1人は 魔王を操る。
そんな魔王を操る力を隠し持っている女子高生、篠栗奏魔は何かを感じとった。
「・・・・・・なに?」
後ろを振り向いても誰もいない。
彼女は首をひねり、前を向いた。
「最近なんだか寒気がするわ。 世界の90%が支配されているなんて。 私に出来る事はないのかしら。 あそこに入ったはいいけど、なにをしてればいいのかさっぱり。 私には魔力なんてないのに」
歩きながらつぶやく奏魔。
鞄を振り回しながら憂鬱そうにまた言う。
「あぁー。 なんかいい出会いってないのかしら。 でも、まぁ、確かに暗那の言うとおり、O-GASUTOの折原玲音はかっこよかったわよ」
「また言う。 正直に認めなさいよ。 玲音の事好きって」
隣にいた 小柄な赤髪の少女、赤嶺暗那は笑ながらそう言った。 刀を携えるその姿は普通の女子高生とは違う雰囲気だった。
「ち、違うわよっ!!別に折原くんが好きなわけじゃないわよ!!私が好きなのは、玲音の方だから・・・・・・」
少女は顔を赤くし言った。
そんな奏魔に暗那は笑いながら 指先で脇腹を突つく。
「折原玲音。 学校とO-GASUTOでは性格が全く違う。 それは彼の癖でしょう、学校では期待されすぎている・・・・・・。 学年トップの成績に弓道部のエース。 それに女子にモテるときた」
「O-GASUTOの玲音は性格に違いがありすぎるのよ」
折原玲音。彼もO-GASUTOの一員として活動している。
彼は小さな頃に親を殺されている。
それ以来、双子である折原夜一にしか心を完全に開かなかった。 そんな彼は自分を偽った。 学校では必死に笑顔を作っている。
それはもう1人になりたくはないから。
閉ざした心を開けようと努力し、玲音がたどり着いた1人にならない手段。
本当の自分じゃなくてもいい、心の底から笑えなくても、道化師だと言われてもいい。
偽りを作った。
のちに弓道部のエースだのトップクラスの成績だの言われ、本当の自分を学校では出せなくなった。
「皮肉なもんだよな。 心の拠り所もないまま もうすぐで世界が終わるんだぜ」
「っ!!玲音!?」
奏魔達の頭上。
大きな木の枝に彼は立っていた。
「重圧に人は耐えられないさ。 どうせ皆俺の様に偽りの顔を作る事になる。お前らだってそうさ、きっといずれは本性出せずに死んでいくんだろう?」
玲音は音も無く飛び降り 奏魔と暗那の前に着地した。
白銀の長髪に灰色の双眸。 整った顔立ちで女性が見たら直ぐに恋に落ちるであろう。
「口の聞き方が悪いわね、玲音」
暗那が鞄を肩に担ぎ一言。
「お前の事だ。 暗那」
「なんの事かしら?」
誤魔化す暗那の目の前に肩に担いであった弓矢を一本取りそれを突き出す玲音。
そして 低い声音で言う。

「ばればれなんだよ。 敵対心が見えまくりだ」

吹き抜ける風。
暗那は目を細めながら、奏魔はパチクリと瞬きをし、玲音は弓矢を下に降ろした。
しばしの沈黙。
「玲音?何言ってるの」
と奏魔が沈黙を破った。
そんな奏魔に玲音がこいこいと手招き。
奏魔は言われるがまま 玲音の隣に。
玲音は奏魔の脇腹をガシッと掴んだ。
「ひょわぁぁぁっ!?!?」
驚く奏魔を余所に玲音が手を開く。
「こんなもの奏魔に付けて何をする気だ?」
手には一行の呪詛があった。
紫色に光るそれを暗那は訝しげにみていた。
「お前だろう。 つけたのは」
「・・・・・・知らないわ。 私じゃない」
「シラを切る気か? いつまでそれが保つのか、楽しみだな」
玲音は不敵に笑った。
そんな2人をただ見ていた奏魔は耐えきれず口を挟む。
「ちょっとちょっと! 暗那がそんなことするわけないじゃない! 玲音だって疑いすぎだよ!」
「お人好しもいいとこだな、奏魔。 さっきまでの暗那の行動を思い出してみろ」
そういわれ、奏魔は今までの暗那を思い出す。
ただ一緒に下校していただけ。 別になにもおかしいことなど・・・・・・。
いや、ひとつ。 ひとつ思い当たることがあった。

"そんな奏魔に暗那は笑いながら 指先で脇腹を突つく"

「あ・・・・・・」
あの時。 あの時に呪詛を付けられた?
「どうやら心当たりがあったようだな」
「で、でも・・・・・・」
暗那と玲音を交互に見やる奏魔。
暗那は俯いて手を握り締めていた。 肩が少し震えているようにも見える。
そんな彼女を見て奏魔は頭の中がごちゃごちゃになっていく。
「暗那は・・・・・・暗那は本当に私に呪詛を付けたの?」
震える声で奏魔が聞くと、暗那は頷かなかった。
「私を殺したかった・・・・・・とかじゃ、ないんだよね」
それも答えない。
「じゃあ、やっぱり本当に。 れ、玲音の言うように呪詛を「うるさいっ!」
問いただしていた奏魔の声を暗那が遮った。
今までの優しい声とは全く違う声に奏魔は恐怖を覚えた。
「さっきから聞いてれば、殺したかった? 当たり前じゃない、殺さなかったらなんでこんなことするの?」
「暗那・・・・・・」
「黙れ! お前の声なんか聞きたくない! 邪魔なんだ! 媚びへつらって私の気持ちも知らずによく笑えるな!」
目の色が変わった彼女を見て、奏魔は頭の中が真っ白になった。
今まで仲のよかった親友。 たった1人の親友だった。
小さい頃からずっと遊んでいて、なにからなにまで一緒だった暗那が今、自分を殺そうとしている。
「お前なんかおまえなんかオマエナンカ・・・・・・」
凄まじい形相で暗那が刀を振りかざす。
それに反応しない奏魔。
刀が奏魔の首筋に迫ったその時。
「悪魔堕ちに殺られる気か?」
玲音が自らの手で食い止める。
カタカタと手の震えに合わせて金属音が鳴り響く。
食い込んだ刃。 手のひらからおびただしいほどの血が流れ出した。
「れ、玲音・・・・・・」
「はやっ、早く、逃げるぞ!」
玲音は強引に奏魔の手を引き、自分の反対の手に食い込んだ刃を痛みに耐え、抜き取った。
顔を顰めながらも、その地を蹴る。
まるで風の如く走る玲音に奏魔は必死になってついていく。
どこかで雷が鳴った。 稲光が轟き空気が震える。
「っ! 玲音! 追いかけてくるよ!」
「こいつ!」
後ろからは暗那が迫るように走ってきて、もうすぐで追いつかれそうだった。
雨が降り出す。 ものすごい量の雨だ。
びしょ濡れになりながら2人は街を駆け抜けた。 幸い人はいない。
水たまりを越えずに走る。 跳ね返った泥水が足にかかるのも気にしなかった。
「これでも、食らえ!」
玲音は矢をつがえ、洋弓を引いた。
甲高い音を立て、弓は飛んでゆき暗那の心臓に突き刺さった。
倒れる暗那。 それをはっきりと見た奏魔はその場に膝から崩れ落ちる。
「あぁ・・・・・・」
「しっかりしろ。 まずは避難が先だ」
奏魔を立たせ、玲音が言う。
「俺の家に来い」



「ふぅん。 それで奏魔くんを連れてきたんだね?」
「ああ。 そう言うことだ。 だがな兄貴、俺はいつ火雅梨を呼び出せと言った?」
「ずいぶんな言い草だな。 きちゃ悪いのか」
広いリビングに3人の話し声が響く。
「そういうわけじゃない」
玲音は兄を睨みながら言った。
玲音の双子の兄、折原夜一。 兄も弓の隠れ名人で成績優秀、優男として有名だ。
「いや、僕は火雅梨くんも呼んだほうが彼女にとっても楽になるだろうと思ってね」
バスルームに繋がる廊下を見つめながら夜一はつぶやく。
家に着いて早々泣きながら震え出した奏魔に玲音が風呂を進めたのだ。
「そういうことだけは気が利くな」
うんざりとため息を吐きながら赤い髪をツインテールにした火雅梨は言った。
顔は普通だ。 すごく可愛くもなく、不細工でもない。しかし意思の強そうな双眸だけは人目を惹いた。
「俺らの関係にも気が利くと嬉しいんだがな」
チラッと火雅梨を横目に見る玲音。 火雅梨もそれに気づいたようで嫌な顔をする。
「お熱いねぇ・・・・・・」
玲音と火雅梨最悪の仲間である。
猿と蟹位の仲の悪さだ。
「じゃあ僕は席を外したほうが「おい。 殺すぞ」
「玲音に同意見だ」
「・・・・・・はいはい」
夜一は苦笑し立ち上がった。
「なにをするんだ?」
「あったかい飲み物でも奏魔くんにあげようと思って。 きっと彼女の心の傷は僕たちに計り知れないだろうから」
そういう面は夜一が気遣ってくれる。
だから玲音は奏魔を連れてきた。
メンタルの問題は自分が1番向いているだろう。 叱咤激励はお手の物、更にはカウンセラーの卵だから。
夜一は優男ならではの心遣いが強い。 器用だからその辺は大丈夫だろう。
そんな優男ならではのもっともの気遣いが『幻技師火雅梨を呼ぶ』ということだったのだ。
火雅梨と奏魔は団体内でもクラスでもかなり目立つコンビだ。 仲も良い。
実はコンビというわけでもなく、単に火雅梨が奏魔を守っているという意味でもある。
学年内でも1位2位を争う美人。 当然男が群がる。
奏魔も柔道黒帯の持ち主だが心優しい彼女が同級生を背負い投げできるわけもなく、火雅梨が守っているわけだ。
「お風呂上がりました・・・・・・」
か細い声。 部屋に入ってきたのは奏魔だった。
「ごめんね。 お風呂まで借りた上に洋服も」
「いや、あれだけずぶ濡れだったんだ。 風邪を引いていないだけ良い」
奏魔が今着ている服は玲音の服だった。
黒いジャージという質素な物だったが、身長の違いで彼女の体にはあっていない。
「すごい、ブカブカね奏魔」
「私は火雅梨と違って小さいんだもん! 火雅梨が大きすぎるだけだよ!」
「いや、玲音が大きいだけだよ。 大丈夫さ奏魔くん」
台所から出てきたのはマグカップを手にした夜一。
そのマグカップを奏魔に渡し、ソファに座った。
「すこし気持ちを落ち着かせないと。 ゆっくり飲んでいいよ」
「ありがとう」
しかし奏魔は飲もうともしない。 ただ湯気を見つめている。
不思議に思った玲音が尋ねる。
「どうした? 気分でも悪いのか。 やっぱり風邪を引いてしまったか」
「あ、全然平気。 でも最近、どうも食欲がなくて・・・・・・」
「食欲? なんで」
火雅梨が聞くと奏魔は困ったような顔をして話す。
「変な夢を見るんだ」
「夢?」
「うん。 真っ暗な部屋に立ってて、誰かを呼んでるの。 私は何回も呼ぶんだけどその人は現れない。 そして名前も覚えてないんだ。 そのうち自分まで真っ暗になって、消えていくの」
言い終わると奏魔はマグカップを置き自分の腕を締め付けるように握る。
「なんでだろう。 その人はすごく私にとって大切な人だと思うんだ。 一回どこかで会ったことあるかもしれない・・・・・・。 それがどこかなんてわかんないけど。 怖いんだ、もしもその夢を見なくなったら、自分が1人になってしまいそうで」
小さく震えるその肩を夜一は抱く。
「大丈夫だよ奏魔くん。 君は1人じゃない。 火雅梨くんだって玲音だって僕だって団体のみんなだって味方だから」
そう言う夜一に奏魔が頷こうとした時。
奏魔は夜一を反射的に突き放した。
柔道黒帯の彼女の力は強く、夜一はそのままソファから落ちる。
しかし、結果的にはそっちの方がよかった。
ちょうど廊下から何かが飛び込んできて今まで2人がいたところに剣が刺さったからだ。
「なっ・・・・・・」
「暗那だ!」
玲音が警告すると確かにその何かの姿は暗那だった。
高校の制服に刀という異色な格好。
そしてその目。
今の暗那の目は獲物を見つけた野生動物のように爛々と耀いていた。
「完全に悪魔堕ちしているな」
「そのようだね。 玲音、まずは外に出よう」
夜一の提案に玲音は頷くと後ろにいた2人に目で合図。
女子2人は頷き合ってそれぞれ自分の武器を構える。
夜一は和弓、玲音は洋弓。
火雅梨は剣、奏魔が銃だった。
「行くぞ」
玲音が言い、走り出したと同時に奏魔が発砲。
その音を合図に夜一も火雅梨も玄関へと向かう。
相手が振り返る暇すらも与えずまたトリガーを引く奏魔。
空砲が鳴り響く。
「私は許さないよ。 暗那が悪魔堕ちするなんて許さない」
狙いを定め、もう片方の銃のトリガーを静かに引いた。
耳を劈くような発砲音、勢いよく飛び出した弾が薬莢と筒に分かれ暗那に貫通。
「そろそろかな、玲音!」
奏魔が彼の名を呼ぶ。
「まかせろ!」
すると奏魔の真後ろにあった大きな窓が開き玲音がひょこりと身を乗り出す。
「こいよ、お前の相手はこの俺だ!」
そう言った瞬間、暗那は窓に向かって突進。 外に出た。
それを見た玲音は口の端を吊り上げ、矢をつがえる。
「仲間と言えども、悪魔は悪魔だ。 殺るぞ」
ハスキーな声を背中で聞いて、奏魔は頷いた。
そして自分も玄関へと走り、靴を履く。
ドアを開けた時にはまだ雨が降っていて、視界が悪かった。 しかし愚痴を零すわけにもいかない、雨の中に身を放り投げ暗那に狙いを定める。
寒さで手が震える。 標準がズレる。
それでも彼女は狙いが定まったその時を見逃さなかった。
一瞬で引いたトリガー、薬莢が飛んでゆき暗那の腕を掠めた。
「ちょこまかと・・・・・・」
「まかせて!」
火雅梨は猫のようにジャンプすると剣を振り上げる。
「燃え咲かれ、一輪の花。 紅く光るはその花弁。 燃え散れ 彼岸花!」
炎を纏う剣。 さらには火雅梨の体も炎を纏っている。
炎の剣が暗那を切り裂く。
暗那は崩れ落ち、動かなくなった。
「とりあえず、悪魔は祓えたかな」
火雅梨の声を聞いて、奏魔が暗那に近づき立ち止まったその時。

暗那が突然目を開け、奏魔に刀を突き立てた。

「っ・・・・・・!?」
反応できず、目を見開く奏魔。 恐怖で体が固まった。
誰もが援護も間に合わない。 そう思った時。
「危ない!」
玲音が奏魔の前に躍り出た。
腹部に突き刺さる刀、倒れる玲音。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!」
奏魔の悲鳴がこだまする。
「こいつ!」
夜一が弓を引くと暗那はそちらに向き合い突進。 その隙に奏魔は玲音を抱きかかえる。
「れ、れおん! 玲音! 大丈夫!?」
彼女の声に玲音は少しだけ目を開ける。
「玲音・・・・・・! だめだよ、死んじゃったらだめだよ!」
「何を言う、俺が・・・・・・死んでも、悲しむやつらなんて「私が悲しむんだよ!」
雨音をもかき消す奏魔の叫び声。
それに玲音は目を見開いたが、クスッとはにかむ。
「本当に、優しいんだな」
「優しくなんかないよ。 本当に思った。 だって夜一も火雅梨も団長も玲音がいないとだめなんだよ」
「なるほど・・・・・・そうか。 これが仲間か」
「うん」
「体が勝手に動いた。 お前だけは守らなければならないと思っていた」
「もういいよ玲音、それ以上無理しちゃだめ!」
奏魔の言葉に玲音は力なく頷くと目を閉じた。
彼を抱えて屋根のあるところに寝かせると奏魔は後ろを振り向く。
火雅梨も夜一もそろそろ限界だ。
「私が・・・・・・私がやらなきゃ!」
銃を捨て、暗那と夜一が対峙する後ろに飛び出る。
「奏魔くん、銃がないのにどうやって・・・・・・うわっ!」
下から振り上げられた刀を間一髪で躱す夜一。 玲音と同じ白銀の髪が少し切れた。
「ちょ、どうしてくれるんだよ! 昨日前髪切ってもらったばっかりだぞ!?」
夜一がそう愚痴りながら和弓で暗那を殴る。
「悪魔堕ちでも暗那を殴りたくないな・・・・・・」
歯ぎしりしながら夜一は言った。
そんな暗那は奏魔に気づいたのか、獲物を奏魔へと切り替え襲いかかる。
「やばい、奏魔くん!」
「奏魔逃げて!」
2人が叫ぶ。
しかしそんな叫び声を制したのは静かな力ある言葉だった。

詠 空へと舞い上がり 音 大地へ響くだろう

産まれ堕ちた子らよ あなたたちのその足で凍てついた地を歩くのはまだ早い

雷鳴が轟く夜に 彼は訪れる

【私の願いは聞き入れられただろう】

「出でよ、十二魔天王の1人。 雷の魔王 トルエノ!」

その言葉は奏魔が発した詠唱だった。
魔王を呼び出すために必要な詠唱。
雷が鳴り響く。 空気を震わす稲光がどこかに落ちた。
否、どこかではない。
奏魔の隣だった。
砂埃が舞い上がるが、雨のおかげですぐに収まったようだ。
そこから現れたのは1人の青年。
黒い髪に青のマント。 そして切れ長の双眸。
「久しぶりの人間界だな・・・・・・」
雷の魔王トルエノだった。
「トルエノ。 力を貸してほしい」
「どうしようかな」
「お前が貸さないというのなら無理やりでも貸してもらう」
「強引なお嬢様だな」
「ふん・・・・・・まずはお手並み拝見といこうか。 暗那に憑いている悪魔だけを殺せ」
まるで旧友に話しかけるかのような言葉。 トルエノは薄く笑った。
「了解したーーーーーグローリア」



次の日。
朝目が覚めた玲音は自分が自室のベッドで寝かされている事に驚いた。
そして腹部の傷もなくなっている。
急いで跳ね起きリビングへと繋がるドアを開けると。
「おい奏魔・・・・・・。 この黄色い物体はなんだ?」
「ははっ、トルエノくん。 これは『卵焼き』と言うんだよ。 奏魔の卵焼きは塩辛くてね、食べれるもんじゃないよ」
「一言多いんだよ夜一! トルエノも黙って食べな」
卵焼きを箸で突つく黒い髪の青年に笑顔でその青年を眺めている兄にソファで爆睡している火雅梨にキッチンで朝ごはんを作っている奏魔がいた。
平和だ・・・・・・。
「あ、玲音! おはよう」
「ん? あぁ、おはよう奏魔」
「紹介するね! 私が呼び出した雷の魔王トルエノ!」
青年を指差すと奏魔は玲音の前に来る。
「ねねっ! すごいでしょ? その玲音の傷もトルエノが戻しちゃった」
「戻したというか、治したというか。 まぁそんなとこだ。 よろしく玲音。 決してお前らに害を与える悪魔ではない。 俺の事は炉欄って呼んでくれ」
「は? 炉欄? なにかっこいい名前勝手につけてるの? あんたなんてポチで十分「奏魔」
嫌味をいう奏魔に玲音が言う。


「とりあえず・・・・・・キッチンの火を消化器で消してこい」


「え・・・・・・?」
時が止まったようなきがした。
キッチンからは焦げ臭い匂いが漂ってくる。
「ど、どどどどどどどどどどどどうして言ってくれないの!」
「火ィ消さないお前が悪いだろ!?」
「落ち着け奏魔、玲音。 早く消化するんだ」
「漢字違げぇよ! 何消してるんだよ! っていうかお前魔王だろ、どうにかしろよ!」
「・・・・・・何も聞こえないな」
「聞こえてんだろーっ!!!」
こうしてO-GASUTOの伝説が始まった。


かくして、火は夜一の手によって消され、3人は口喧嘩、ましてや火雅梨は起きずに事を終えたのである。

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