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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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無痛の叫び 3
追記より小説の続きです


嘉峯は震える声で恐る恐る祭星へ尋ねた。
「コールドスリープっていうのは、なんなんだ。 なぜ、そこに入らなきゃいけないんだ」
「嘉峯ちゃん、ダーカー因子が溜まっちゃってるからねー。 緋屶は嘉峯ちゃんをキャスト化させる時に、ダーカー因子を埋め込んでたみたい。 要するに実験だよね」
また新しいトリメイトを取り出して、祭星はストローをくわえる。
「飲みすぎではないか祭星くん。 腹を下すぞ」
「まだ怪我治ってないんですー」
クロムウェルの言葉にそう返すと、今度は彼に言う。
「まー。 コールドスリープにはいればそのダーカー因子なんてちょちょいのちょいだよねクロムウェルさん!」
「そうだな。 浄化装置の役割もあるらしいが」
「私もクロムウェルさんもコールドスリープに入ってたことあるんだから。 そんな心配しなくていいよ、寝てるだけだから嘉峯ちゃんにとっては一瞬だよ」
その祭星の言い方に、嘉峯は耶式をチラッと見て言う。
「・・・・・・でも耶式にとっては」
「待って待って、たった2ヶ月だよ? 私たちなんて2年か3年なんだからね。 2ヶ月我慢すればまた普通の日常が戻ってくるんだから。 今、コールドスリープに入るのを嫌がっててそのままになるのなら、嘉峯ちゃんダーカーになって殺されるよ? どっちがいい?」
黙りこんでしまった嘉峯。
祭星は大きくため息をついた。
「ねぇもう子供じゃないでしょう。 確かに2歳だけど。 その中に入ってるのは人工知能だけどちゃんと考えられるでしょう? 駄々こねてないで、ちゃんと自分が後悔しない選択をしなよ。 離れたくないのはわかるけどさ、そうやってずっと依存してるだけじゃ、本当に離れ離れになった時どうするの?」
「・・・・・・わかった。 2ヶ月、我慢したらそれからは心配いらないんだろう?」
「・・・・・・そうだね。 なにも、心配ないよ。 じゃあ決まりだね。 よしよし、耶式くん。 嘉峯ちゃんをメディカルチームのところまで連れて行ってあげて。 私は先に向こうに行って準備してるから」
彼女はそのまま部屋を出て行った。
「嘉峯様、行きましょうか」
「ああ・・・・・・、そうだな」
耶式に手を引かれ、嘉峯は自分の足でコールドスリープへ向かった。







コールドスリープへ向かう途中の廊下。
嘉峯は耶式の3歩後ろを俯いて歩き、考え事をしていた。
本当に2ヶ月だろうか。
もし自分が起きて、何百年も経っていて、耶式もクロムウェルも祭星もいなくなっていたら、自分は誰を頼ればいいのだろう。
自分にはたった一瞬にしか感じないのに、他の人間には永い永い時間に感じるだろう。 その永い間、耶式を1人にしたくない。
まだずっと一緒にいたい。
元はと言えばどうして自分にダーカー因子などが組み込まれていたのだろう。
そのダーカー因子で動いてきた自分は今まで一体何者だったのだろう。
考えれば考えるほどわからない。
どこか遠いところに落ちていくような感覚。 足がフワフワとして、感覚が飛んでいく。
もしも自分が。

「目覚めなかったら、どうしよう」

声に出ていたらしく、耶式が足を止める。
「嘉峯様」
「っ! すまない! また弱気になってしまった・・・・・・。 でも大丈夫だ。 お前とまた一緒に過ごせる時間の方が永いに決まってるもんな・・・・・・。 うん、大丈夫だ」
それでもまだ不安そうな顔をしたままの嘉峯。耶式が嘉峯に手を伸ばした時だった。
どくん、と胸が痛む。
「・・・・・・? なんだ、この、感じ・・・・・・。 これ、さっきも・・・・・・!」
緋屶と出会った時の感覚だ。 いや、それよりひどい。 身体が締め付けられるように痛く、徐々に目の前がぼやけてくる。
「嘉峯様!」
「耶式くん離れて!」
耶式の後ろから駆けつけたのは祭星だった。
「くそっ・・・・・・! もうちょっと説明を簡潔にすべきだった。 許可を得ないままでもコールドスリープに押し込むべきだった・・・・・・!」
肩に収めていたロッドをとりだして、祭星が悔しそうな顔をする。
「祭星様、嘉峯様は助かるのですか」
「とりあえず気を失わせるから、耶式くんは嘉峯ちゃんを抱えてすぐにコールドスリープに向かって。 それまではなにも心配しなくていい。 コールドスリープに入れた後のことは、また君に説明する。 ・・・・・・って話してる途中に!」
嘉峯がゆらりと立ち上がる。 だがその瞳には闇が堕ちていた。
「もう完全にダーカーそのものじゃん・・・・・・。 代償が怖いなぁ・・・・・・。 っ!」
彼女は一瞬にして祭星の懐に入る。 そして拳を作った。
「・・・・・・!」
だが彼女は戸惑いを見せ、そのまま勢いを殺す暇もなく祭星の腹を殴った。
「うっ・・・・・・! さっさと、眠ってろ!」
痛みに顔を歪ませながら、祭星は嘉峯の鳩尾を肘で突き、機能を停止させた。
「流石にコアの部分殴ったら壊れるだろうけど、この程度ならいいかな。 耶式くんあとは任せたよ」
「了解」
耶式が嘉峯を抱きかかえて先を急ぐ。
残念ながら今の祭星にそれを追いかける体力も気力もない。
腹を抑えてその場に膝をつくと、大きくため息をつく。
「無茶をしすぎたようだな」
後ろからクロムウェルがやって来る。
「でも勝算はある、殴る前に一回戸惑って、狙いを定めてた顔じゃなくて腹にした。 あの時嘉峯ちゃんが狙いを変えたのは、私が顔に怪我をしてるから。 ・・・・・・顔の怪我より、腹を刺された怪我の方がひどかったんだけど、ね」
咳とともに血を吐き出す。 それを拭って立ち上がった彼女は、クロムウェルに背を向けて手を振る。
「後のことはお願いしますよ~。 私はもう一仕事して寝ます」
「流石の君でも堪えたか」
「そりゃ私はキャストじゃないんです。 それにここの世界の人間でもない。 でも、キャストにも心があると思ってますし、人間同然と思ってます。 だからあのクソ兄貴は制裁が必要です。 私が帰ってこない時は、クソ兄貴に実験材料にされたと思っててください。 まあ、そんなことありえませんが。 ああそれと」
祭星は立ち止まって、クロムウェルへ言う。
「記憶障害のこと、耶式くんに説明しておいてください。 ・・・・・・言いづらい事かもしれませんが、お願いします」
「いずれは話しておかねばならんことだ。 いいだろう」
クロムウェルは腕を組む。
「あの2人が無事に乗り越えられることを願うしかない・・・・・・な」





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