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楽園の冠
自創作品「アルトストーリア」を主軸とした創作小説・漫画を載せて行きます。
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幸福
追記から、リフティア小説です。
結婚してすぐのお話。
砂糖を吐くくらい甘いです


幸福




今日も城の中は平和だった。
ティアーはいつも通り目を覚ますと、しばらくぼうっとした。 なんとなくだが体が重い。
それから身支度を整えるために洗面所へ行こうとベッドから起き上がった。 そしてふと、ドレッサーの前に大切そうに保管してある指輪を見た。
「早いですわ、もう1週間経ったなんて」
1週間前、彼女は1人の従者と結婚した。
イルーシェンの家系において、貴族ではなく、ただの民間、それも人工の鳥と結ばれるのは初めてだった。 当然、あまりよく思われていないのは事実。
そして1週間経ってもなにも進展がないのも事実である。
「最近忙しいですし、彼も王になったばかりでやることが沢山あるもの。 仕方がないことですわ」
そう言い聞かせ、顔を洗い、歯を磨く。
「そう、仕方ない・・・・・・」
考えてくるとなんだか悲しくなってくる。 パシパシと自分の頬を叩いて、気を取り直す。 その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
ドアが開いた。 一礼して入ってきたのは、1人の鳥。
「おはようございます、陛下」
「リフさん!」
女王の執事、リフだった。
そして彼女の夫でもある。
ティアーは彼に駆け寄って、にっこり笑う。
「おはようございます、リフさん。 1番にあなたに会えて嬉しいですわ」
それを聞いてリフは顔を赤くして、微笑んだ。
「陛下、今日は10時から会議が開かれることになりました」
「あら・・・・・・残念ですわ」
「なにか大切な用事があるのですか?」
「いいえ」
ティアーが首を振る。 開かれたバルコニーの奥を見つめて、ぽつりと呟く。
「折角の天気ですから、一緒に街に行きたかっただけですわ」
「私が大臣達にお願いしてみましょう。 どなたと街に行かれるのですか?」
「え?」
素っ頓狂な声を出したティアー。 そしてムッとした顔でそっぽを向く。
「どなたって、そんなの貴方に決まってますわリフさん」
「お、オレ!?」
驚きすぎて普段の口調に戻ったリフ。
「だって、式を挙げてもう1週間も立ちますのに。 手を繋いだこともありませんのよ! わたくしだって、あなたと2人きりの時間がもっと欲しいですわ・・・・・・」
顔をさくらんぼの様に赤く染めて、ティアーが俯く。
「へ、陛下・・・・・・」
「ほら、その陛下っていう呼び方ですわ!」
「呼び方?」
「もうわたくし達は歩みを共にする人間ですわ。 だから、陛下なんて呼び方は、嫌なんです・・・・・・。 ティアー、って、誰にも呼ばれたことない、呼び方で呼んでほしいです、わ・・・・・・」
ティアーの望み。 リフはそれを受け入れることができなかった。
「でも、私は鳥です、それに闘鳥だった。 そんな者が」
「関係ないですわ!」
ティアーが腰に手を当て、リフに言う。
「わたくしは貴方が貴族でも闘鳥でもどんな境遇であれ、何があっても貴方を愛しています。 それは貴方自身に惹かれたからです。 愛する形に、地位も人間も鳥も必要ないでしょう。 それに貴方がハゲていてもわたくしは、リフ、貴方が大好きです」
「ハゲは余計ですよ・・・・・・」
リフが照れ隠しにいった。
「だからこうしましょう。 わたくしと2人きりの時は陛下呼びをしない、敬語も使わない! よろしいですね」
「え!?」
「これは主君の命令ですわよ」
フンッとまたそっぽを向いたティアー。 そのティアーに従うことしかできなかったリフは、わかりましたと頷いた。
「では、わたくしの名前をよんでくださいな」
「い、今ですか!!?」
期待の目でリフを見上げるティアー。
だがしかし、今までティアーに仕えてきて、それも憧れの存在だった彼女にいきなり呼び捨てで名前を言うなど、リフにとっては精神的に辛い。
しかし言わなければきっとティアーは悲しむ。
リフは心の中で『これは陛下のご命令!』と必死に唱えながら、小さく呟いた。
「ティアー・・・・・・」
するとティアーは顔を抑えてフラフラとしながらバルコニーへ出る。
「こんなに・・・・・・」
こんなに恥ずかしくて、嬉しいこととは思わなかった。
たった一回名前を呼ばれただけで、心臓が飛び出るほど胸が高鳴る。 顔があつい。
心配で付いてきたリフに、ティアーは抱きつく。
「っっ!!!?」
「リフ、ごめんなさい。 しばらく、このままで・・・・・・」
「・・・・・・、陛下?」
おかしい。
リフがティアーの肩に触れる。
「陛下、もしかして、熱が!」
「熱・・・・・・? そういえば、朝起きて、少し頭がぼうっとする感じがありましたが、そうですか・・・・・・熱」
それからフラフラとリフに寄りかかるように倒れるティアー。 リフは急いでティアーを抱えて、ベッドに連れて行く。
「陛下、今すぐ医者を呼んできます!」
温かい毛布をかけ、リフは医者を呼びに部屋を出た。


「日頃の疲れが溜まってしまったのでしょう。 熱は少し高いですが、数日安静にすればきっとすぐによくなります」
「てか医者ってお前かよ」
ティアーの額に冷たいタオルを乗せて、ジャックは微笑んだ。 そんなジャックにリフは小言を言う。
「残念なことに城にいる医者は全員城下町に出て行っている。 そこで博識な私が選ばれたというわけだ。 まったく、朝お会いした時点でティアー様の様子の変化くらい見極めんか」
「オレは!」
リフが悔しそうに拳を握る。
「オレはお前みたいに陛下のことを知らない、だから」
「知らないのならこれから知っていけばいい。 お前は確かに私よりティアー様といた時間が遥かに短い。 だがそれがどうした。 短くともティアー様の近くにいて、守ることはできるだろう。 そしてティアー様は選んだのは貴族でもなく、私でもなくお前だぞグリファス。 だったらそれに答えるのがお前の役目だろう! 一体ティアー様がどんな無茶なご命令を出したのかは知らんが、それでもお前はそれに従わないか?」
ハッとしたリフ。 ジャックは続ける。
「お前はティアー様の事が好きなんだろう。 愛しているんだろう? だったら闘鳥でもなく執事でもなく、ティアー様にとってたった一人の大切な存在として、向き合ってやってほしい。 この方にとって、初めて出来た想い人で、10年越しに出来た、たった1人の家族なんだ」
ジャックが笑う。
「・・・・・・わかった」
リフがそう言うと、ジャックは立ち上がり、部屋から出て行った。
それからリフは、ティアーの小さな手を握って、ずっと彼女の側にいることにした。
目覚めたティアーが、寂しくないように。



夕暮れ時、ティアーは静かに目を覚ました。 そして起き上がろうとしたが、自分の手を握るリフの存在に気がつく。
リフは椅子に座ったまま、眠っていた。 きっと長い間自分のそばにいてくれたのだろう。 ティアーはその寝顔をみて、嬉しそうに微笑んだ。
確か熱が出て倒れてしまった。
今は頭痛もない。 少しは楽だ。
「リフ。 リフ、起きてください」
ティアーの声を聞いて、リフは目を覚まし、慌てて平然を装う。
「ふふふ、もうしっかり寝顔を見ましたから」
「陛下は相変わらず意地悪ですね」
彼は笑って、ティアーに言う。 ティアーもつられて笑った。
「もう体は大丈夫ですか・・・・・・じゃなくて」
思い出したように咳払いをするリフ。
そして言い直した。
「もう、悪いところはないか。 ティアー」
それを聞いて、ティアーがあまりの嬉しさに涙を零す。 リフがぎょっとしてあわあわと立ち上がる。
「ど、どこか悪いところでも・・・・・・!」
「いいえ、嬉しいの」
体を起こし、リフの手を握り返すティアー。
「やっと、リフと一緒になれた気がした」
「ティアー・・・・・・」
するとティアーはリフに手招きをする。 不思議に思ったリフは彼女と目線を合わせるために少し膝を折り、近づく。
そんなリフをティアーは力一杯抱きしめた。
「な、にを」
「今はもう少し、このままがいいです」
そう言ったティアー。 リフは彼女の肩を優しく抱いて、微笑んだ。



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